扉頁に戻ります。 「ご挨拶」章の冒頭に行きます。 「子供の教育」章の冒頭に行きます。 「臨床への活用」章の冒頭に行きます。 「演奏家vs作曲家」章の冒頭に行きます。
「音楽に思う事」章の冒頭に戻ります。 「ふれあい音楽会」章の冒頭に行きます。 「これまでの活動」章の冒頭に行きます。 「その他」章の冒頭に行きます。

ここは、「扉頁音楽に思う事」章の「エッセイ」節第8頁です。


音楽に思う事 音色の心地よさを求めて・ベル素材選び
Request for ComfortableTone Quality, to Select the Material for Bell

音色に関する自由エッセイの第二段です
ある会社で、ちょっと面白い実験を目撃しました。風鈴の短冊の様な沢山の薄鋼板が、横棒に紐で整然と吊り下げられています。試験員はそれを叩き、その音色を比べているのです。聞けばベルの素材としてどれが適切かを調べているとの事でした。
これは非常に難しい作業です。どんな音色が良いかは、実は科学的に判っていないのです。試験員は微妙な音色の違いを、どう判定するのでしょうか。

音色と言う漠然とした概念
恐縮ながら、本日は物理的なお話も少々‥‥、これも恐縮ながら、私は物理は大の苦手でしたので、殆ど主人の受け売りなのですが‥‥。
音は媒体(=音を伝える物体、例えば空気や壁)の密度変化の縦波(=変化方向と進行方向が同一である波)伝播です。音速は室温で約340m/sec、高温程速めになります。室温での音速がマッハ1で、マッハ1以上の速さを超音速と称します。少し前に事故を起こしたコンコルドは、超音速旅客機です。
この密度変化をグラフにした波形(右図)で、一般には音の検討をします。波形には三種類の特性が
keiko5-08a.JPg
包含されます。第一は密度変化の大きさ(振幅)で、これは音の強さなる物理量に関係します。第二は密度変化の時間幅(周期)で、これは音の高さなる物理量に関係します。振幅でも周期でもない波形の特徴は、実は対応する物理量が明確ではなく、音色と漠然と呼ばれます。科学的に記述できない音の特徴が音色なのです。

音色とは何か
良い音色とは一体どんな音色でしょうか。これは人によって、あるいは状況によって異なる様にも思えます。良いとはどんな事かが普遍的でないかも知れないからです。
例えば、これから試合に望む緊張状態の時には積極的な力強い音色が適切でしょうし、静かに休みたい時には優しい穏やかな音色が良いでしょう。一方で、工事音、機械音、怒鳴声等は不快でしょう。
音色は、不快な音色とそうでない音色に大別するのが良いかも知れません。不快な音色とはいつ誰が聞いても心地良くない音色と定義する事にして、従って我慢や無視が可能な事もあるが本質的には喜ばれません。不快でない音色の中に、その時その人にとっての心地良い音色が存在する訳です。

楽器の音色は自然の音色
中世の欧州では音楽は貴族の娯楽で、モーツァルト以前の作曲家は比較的穏やかな音楽を作曲してきました。楽器編成はチェンバロやオルガン、または弦楽器主体の管弦楽で、どの楽器も柔らかい音色です。ベートーヴェン以降、ピアノ、管楽器、打楽器の使用頻度は増し、いろいろな音色で様々な感情を表現する様になりました。
最初の楽器は打楽器と言われています。木を、果実を、石を叩き、音階(高さ)の概念がない打楽器を‥‥正確には物理的には存在する音階を感じないだけなのですが‥‥、その音色で楽しんでいました。つまり打楽器は本来自然物でした。その内、鐘やベル等の金属を叩く様になりました。金属は人工物ではありますすが、岩石に含まれる鉱物を加工しただけの物ですで、自然物の名残があるに違いありません。
 弦楽器は、木の枝に糸を張って、それを振動させる事から始まりました。木管楽器は草笛、金管楽器は角笛が先祖です。こう考えると、現在まで主として用いられている楽器の音色は、自然の音色であると言えます。クラシックではなぜお決まりの楽器しか演奏に用いられないのかと、お思いになった事はありませんか? これはそもそも楽器が限られるからであり、それは即ち楽器の音色が不快でないからですが、その理由は何でしょうか? 楽器が自然の音色を再現しており、人間が自然の中で生きる様創造された以上、自然の音色が不快であるはずがないからと考えて良いのではないでしょうか。
 一方で最近、キーボードやエレキ楽器に代表される電子楽器が出回る様になりました。電子楽器を用いた電子音楽は、電子音が人工的な音色であるが故に、不快に感じる事もあるでしょう。実は生理学的に不自然で聞いてはいけない音色も、巷に存在して聞こえてしまっているのかも知れないと考えると、ちょっとゾッとしますね。
 勿論、日本の楽器についても同様です。付け加えると、文化歴史の相違が、秩序と理屈のある西洋楽器の音色に対して、無の雰囲気を漂わせる日本楽器の音色を作り上げた訳ですが。

良い音色で幸せに
 楽器にも表情があり、演奏によって楽器の音色が微妙に変化します。あれ、この演奏者は今日機嫌が良くないな、なんて思われた事はありませんか?
 声色と言う単語があります。声にも音色があるのです。怒った声は不快ですし、明るい声は聞いててこちらも明るくなります。心地良い声を出すと、相手も幸せでしょうが、その声を発する自分もまた幸せになれるでしょう。案外、声が健康維持に大変重要であるかも知れません。

ここは、「扉頁音楽に思う事」章の「エッセイ」節第8頁です。