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音楽に思う事 シャープとフラット
Sharp and Flat

現在私達が見る西洋音階(いわゆるドレミ)の音には、シャープ=♯とフラット=♭なる記号が付く事があります。前者は音階に含まれる本来の音程より半音(平均律音階においては12√2倍の周波数分)上げる事を、後者は半音下げる事を指示する記号です。英語ではシャープとは「鋭い」事を、フラットは「なだらか(軟らか)」である事を意味する形容詞です。因にシャープとフラットは、日本語では嬰(えい)や変(へん)と呼びます。なぜシャープとフラットなのか、普段は何も考えずに私は鍵盤を押さえ、主人は音符を楽譜に書き込んでおりました。
この名前の意味を考えるきっかけとなったのは、実はジャズ音階とはどんな音階なのかを考えた事でしたが、その話しはいずれの機会に譲りたいと思います。ともかく最終的には、シャープを付けると音が鋭くなり、フラットをつけると音がなだらかになると素直に考えるのがどうやら正しい様な気がしてきました。演奏会向けのピアノの調律では、しばしば極く僅かだけ音程を高目に調律します。これは音の響きを鋭くする事により、演奏が映える様にするちょっとした工夫なのだそうです。また最近の歌手は、音程を下つらで(つまり低目に)採るので強烈さがなくむしろ軟らかく聞こえますが、これをフラットな歌い方と言うそうです。どうやら音程とは、高いと鋭くなり、低いとなだらかになると言う性質のものらしいのです。参考までにト長調はシャープ1つ、逆にヘ長調はフラットが1つ調号として付きます。常にドレミの7音の内1つが、シャープまたはフラットになるのです。ハ長調と比べると、確かにシャープが多いト調は鋭く(明るく、あるいは元気な)、フラットが多いヘ長調はなだらかな(落ち着いた、穏和な)感じがします。
日本語の嬰や変が果たして同様の意味を持っているとは思えませんが、シャープやフラットの概念が元々西洋音楽の分野である(日本音楽は元々厳密な音程を発しないフラットな性質)事を考えるとこれは当然かもしれません。しかしながら日本語や漢字にも、例えば「心を亡くする」事を「忙しい」と書くし、心の持ち方一つで重くも軽くもなる「病気」は「気の病」と書きます。主人の話ですと、昨今の工学分野では、公式の上っ面だけを用いてその本質を考えない研究者が増えてきたとの事ですが、式はその式がどんな原理と背景の下で導かれたかを知った上で初めて正しく活用できるそうです。古きを温めて新しきを知る。早く速くが合言葉の昨今だからこそ、深層に存在している先祖の築き上げた文明や文化に気付き、それをじっくり味わい、そして伝承する事も大切だと考えております。


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